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家族に関する三題

ちょっと前に本を読んで映画を見たのだが、それらがなぜだかひとつながりのストーリーというか、関連性をもっているように見えた。

1つ目はよしもとばななの小説「ハゴロモ」

これは知り合いから借りた本で、特に内容も知らずに、しかも旅の途中に読んでいたと思って栞がはさまっていたところから読み始めたが、ん、ちょっと覚えていないなとかいって最初から読み始めたらいつの間にか読み終わっていたというかなりライトに読める小説だった。

主人公は東京に出てきて家庭のある男性と長い間不倫関係にあったが、彼と別れてどうしようもなくなり実家のある田舎に帰ってきてなんだか温かい人達に囲まれて心の傷が治って新しい人生を歩きはじめる的な、雑誌ばっかり読んでちょっと失恋した20代後半のOLなんかが読んで喜びそうな内容なのだが、面白かったのは家族の描写である。

主人公の両親はとても愛し合っていたが、事故か何かで母親の方だけ死んでしまう。父は再婚しようとして失敗、その後は娘と同じくらいの恋人と青春をしている。主人公の両親が上手くいっていたのは、お互いに自分のことを最も大切にしていて、それをわかり合っている仲間のような関係性だったからだ、みたいなことを主人公が分析している。これはなかなか素敵な分析で、愛し合っていた両親だが、片親が死んだらすぐに他の女性に手をだす、みたいなふうに思ってしまいがちだが、それは一つの愛の形であり、それだけが全てとは限らないということだ。

主人公の友達の家族はその逆で、旦那が事故で死んでからというもの奥さんは引きこもり、病人と化してしまった。その息子は母の回復を想ってただ同じ家に住んで時々世話をする。彼は、母に早く良くなってほしいとか、自分が世話しているからなんとか、とかいう意識がなく、ただそこにいるだけ、という存在の軽さで、それが主人公を惹きつける。自分も強く惹きつけられた。

2つ目は園子温の映画「紀子の食卓」

有名作品だったがみたことがなかったのでようやく。

17歳の女子高生が田舎を飛び出して東京に行くと、自分とはなにかということを考えさせられて怪しい団体のもとで働くことになる、というあらすじ。

ここでは家族とはなにかという質問が非常にダイレクトに鑑賞者に叩きつけられる。

「あなたはあなたの関係者ですか?」という謎の質問を投げかけるのが、愛のむきだしの宗教団体の一番えらい人と同じ役者で、あの舌っ足らずのやけに悟ったような喋り方を見て笑い出さずにはいられないのだが、それでもかなり強い力で引き込まれる。後に調べたところ彼は漫画家とのことだった。

家族という劇を演じるために彼ら(我々一般すべて)は役になりきることを強いられる。それができないと、家族の中でも問題だし、ひいてはそれが社会的にどう見られるかという基準で非常にクリティカルに問題視される。劇中ではそのような他社の視点は描かれていなかったが。

3つ目は去年大きな話題になった映画「パラサイト 半地下の家族」

タイトルにも家族という単語が含まれているが、この映画では3つの家族の社会的背景とそれぞれの人員構成を紹介しながらストーリーが進んでいく。そのテンポはブラームスの交響曲か、というくらいすごいスピード感とリズム、抒情を伴って展開される。

世界中で熱狂されるほどのものなのか、と訝しんでしまったが、楽しめることは間違いない。

そんなこんなで3つの作品を見てきたが、なんでこんなに関連性があるのかとびっくりしてしまうほど家族というキーワードで、しかもだんだんエスカレートしていく。

こういうセレンディピティに出会えると嬉しい。

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